2015年2月7日

こども運賃では乗れないオトナのウィキペディア

 8年前のブログ記事に後日談を書けるとは、なんともうれしい話である。

・「待てば海路の日和あり」(2006/8/20)
 http://tht.sblo.jp/article/1144508.html

 > ※紙でもCD-ROMでもいいが、既存の百科事典に一度も触れたことのない人がWikipediaの「編集合戦」を引き起こしているのではないだろうか。

・「Wikipedianに捧げる「百科事典の書きかた」」(2006/8/29)
 http://tht.sblo.jp/article/1199831.html

 > 百科事典が存在する意義、百科事典とはこういうものであるという基本的な認識が共有されていない。平たく言えば、百科事典など触ったこともない人たちが先を争って編集レースをして遊んでいる…Wikipediaから距離を置く人には、そんな風に見えているのである。

 > 市販されている電子辞書に百科事典のダイジェスト版が搭載され、まるで辞書のような形式で記事が表示されることにも遠因があるのかも知れない。

 この約1年後、ウィキペディアにおいて同様の趣旨の注意書きが追加されていた。恥ずかしながら、知ったのは最近である。編集の履歴がすべて保存されていることの威力を実感する。

・ウィキペディア「Wikipedia:児童・生徒の方々へ」(2007/9/28)
 http://ja.wikipedia.org/w/index.php?title=Wikipedia:%E5%85%90%E7%AB%A5%E3%83%BB%E7%94%9F%E5%BE%92%E3%81%AE%E6%96%B9%E3%80%85%E3%81%B8&oldid=15145707

 > なお、本の百科事典・CD-ROMやDVD-ROMの百科事典をまだ一度も読んだことがない方は、一度そういったものを実際に見て下さい。「百科事典はどのようなものか」を知らずに百科事典を作ろうというプロジェクトに参加するのは、問題外の愚行です。

 タイトルの通り、こども向けの注意書きである。草稿では「未成年者」とあったが、その後「子ども」、現在は「年少者」に置き換わってしまい、肝心のこどもには届きにくくなったのではないかと心配である。こども向け雑誌の投稿欄の注意書きなど、本職の方でなければ、なかなか書けないだろうと思われる。そして、もっとも難しいのは、こども当人は、自分が「こども」といわれることに納得がいかないものであるということだ。おそらくは、こどもと対等に、しかしオトナが「こども目線で」というのではなく、あくまでこどもから見て対等に見えるような態度、言葉づかいで説明しなければならないのだろう。例えば、呼びかけの言葉ひとつとっても、「年少者のみなさん」でも「キミたち」でもだめで、ましてや「よいこのみんな」も「よいこのおともだち」もNGで、「みんな〜!」でないとだめなんだ、ということなのかもしれない。あるいは、こどもから見て自分より年下、格下に見えるようなマスコットキャラにしゃべらせないといけない、というところまで話は深刻であるかもしれない。とても素人の手には負えない話である。

 だからといって、「小学生から大学生まで」と、高校生や大学生まで道連れにされてしまうのは、ちょっと不びんである。2007年時点の高校生はともかく、いまの高校生なら、きちんと情報モラルの教育を受けているだろう。それを前提に、でもちょっと待て、ウィキペディアの編集はオトナの仕事だゾ、大学生になって、自分の専門分野ができてからでも遅くない(そのために、大学はよくよく選ぶのだゾ)、という引き留め方をしたほうが「オトナ扱い」であって、若いココロがくすぐられる(ココロに届く)のではないか。

 そして大学生になってしまいさえすれば、もはやウィキペディアの形式的な編集(いわば「ゲーム感覚」の=「ニュース速報」で一番乗りしたい、編集レースで他人に勝ちたい、等々)には興味はなく、あるいはそれどころではないほどに忙しくなって、ウィキペディアに害をなすような人はいなくなるに違いない。それでも編集しようとするからには、それなりの問題意識があるのだとみなすことができ、多少つたないところがあって、慣れたWikipedianによる修正が必要になる場面はあるとしても、大筋では十分に貢献できることだろう。もはや、WikipedianのOJTである。

 この問題には、最後の大きな落とし穴がある。なぜ、「ウィキペディアは百科事典」であるのに、「ウィキペディア以外の百科事典」を見なければ、「百科事典とは何か」がわからないのか、それが(こどもには)わからないということだ。根本的には、ウィキペディアがさらに長い年月をかけて、広く認められる百科事典となり、ウィキペディアに目を通すだけで、百科事典とは何かが体得できるようになるまで、この問題は解決しない。すなわち、Wikipedianにあっては、こどもへの対応はそこそこに、そんなこと(そんなこと、といいきるのは語弊があるが、やはりそんなこと)よりも自分の専門や関心に忠実に、より質の高い記事になるよう編集を続けていくことこそが、本当のこどもへの対応、というより、こどもが目指したくなるようなオトナの「お手本」になるのだといえる。「こども目線」ではだめだというのは、こういうことでもあるのである。

 2006年には、こうも書いていた。

 > 運行情報で「○○線は信号故障のため…」と何の説明もなく「信号故障」という表現が使われているが、実は解説が必要な内容なのである。天気予報を見習って、普段から「信号故障というのはこういうことです」とか「雨の日にはどうしても電車が遅れますので余裕を持ってお出かけください」といった案内もしておけばいいのではないだろうか。

 こちらはまったく進展がない。相変わらず、NHK(東京)の朝の交通情報では、ATOSや改札外LED、ホームページと同じ運行情報を読み上げるだけである。これなら、異常があったときに字幕で速報が出るだけで十分で、わざわざJR専用の時間を確保している意味がほとんどない。道路センターのほうが、もっと臨機応変で、普段と違う事情があるときには声色を変えて、例えば「ところで、きょうは花火大会のため…」と、特に注意すべき情報を伝えている。あたりまえのようにプロの仕事をしているだけであるが、それすらできていない(させてもらえていない、といったほうが正確だろうか)。特に、JRと道路が続けて出てくるので印象が強烈だ。交通情報の時間(枠)は短い。こどもが時間を気にせず伝えた後、オトナがうまく調節して時間に収めているようなものである。そのことに自社で気づけないのであれば、まさにこどもであり、ましてや気づいていながら認めないというのであれば、こども以上にこどもであるといわざるをえない。

・OKWave「JR東日本輸送司令室からの交通情報」(2007年2月3日)
 http://okwave.jp/qa/q2719875.html

・Yahoo!知恵袋「朝のNHKニュースでJR東日本の女性が運行…」(2010年7月14日)
 http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1143660826

 もっとも、この方式で運行情報が放送され始めたのは、声の大きな苦情や監督官庁の異例で強力な指導に起因していたと記憶している。いわばオトナの事情で始めざるを得なかったという面が大きい。この放送をやめるということは、すなわち反抗するということだ。こどものふりをして従い続けるとは、なかなかにオトナであるともいえる。さらには、道路とJR、すなわち監督官庁の内部にいまも残る微妙な対立の構図をも、場外試合となるNHKで展開していることになる。なんとオトナらしからぬことをしていることか。いや、これこそがオトナの世界なのだろうか。JRにならって、わからないこどもを演じておくことにしよう。くわばらくわばら。

・JR東日本「BSデジタル・データ放送におけるNHKへの運行情報の提供について」(2000年7月4日)
 http://www.jreast.co.jp/press/2000_1/20000702/index.html

・国土交通省 総合政策局 情報管理部「「情報化社会と交通」研究会(第1回)」(2001年4月11日)
 http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/jouhouka-shakai-to-koutuu/130411-0.html
 http://www.mlit.go.jp/sogoseisaku/jouhouka/jouhouka-shakai-to-koutuu/130411-1.pdf

 情報化社会に向けて、運行情報がデジタルデータで提供されていくという、いまのオープンデータにつながる流れがあったのに、どこでどうこじれてしまったのか。世の中うまくいかないものである。実効的な情報の流れを作ることより、(名指しで文句を言えるように)顔を出せ、(自分が見ることのできない「インターネット」とかいうものではなく、誰もが見られる)朝のNHKで流せと、表面的で形式的なことばかりにこだわるのは、まさにこどもである。しかし、そういうオトナがいるのである。

・FORUM×ATOS [1805](2003年9月28日)
 http://atos.neorail.jp/atos3/forum/nph-forum_p.cgi?num=1805

・国土交通省「中央線高架化の線路切換工事に伴う輸送障害について」(2003年9月29日)
 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283156/www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/08/080929_.html

・国土交通省「JR東日本に対する立入検査について」(2003年10月16日)
 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283156/www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/08/081016_.html

・国土交通省「JR東日本に対する立入検査の結果について」(2003年12月17日)
 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283156/www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/08/081217_.html

・国土交通省「JR東日本に対する事業改善命令の交付について」(2003年12月19日)
 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283156/www.mlit.go.jp/kisha/kisha03/08/081219_.html

・国土交通省「JR東日本の事業改善命令に対する報告について」(2004年2月18日)
 http://warp.da.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/283156/www.mlit.go.jp/kisha/kisha04/08/080218_.html

・日経メカニカル「高架工事トラブルでJR中央線止まる 業者任せの体制で単純ミスを連発」(2003年11月) ※文字コードはEUC
 http://techon.nikkeibp.co.jp/free/nmc/kiji/h590/j590.html

・東レ経営研究所「産業事故はなぜ多発するのか?」(2004年4月28日)
 http://www.tbr.co.jp/pdf/report/mon_a002.pdf
posted by tht at 06:00 | コメント (0) | トラックバック (0) | ながめよみのすすめ
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