2015年2月14日

消せない「いわく」を上書きする方法

 港区の新築高級マンションで施工ミスがあり、引渡し前に解体、建て替えられるという。とてつもないムダである。

・日経BP ケンプラッツ「東京青山の億ション工事で最強トリオが引き起こした前代未聞の大失敗」(2014/2/6)
 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20140205/650390/

・同「地所レジの“億ション”建て替え決定、鹿島が全額負担」(2014/3/17)
 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20140317/655430/

 地中の2本の既設トンネルを「融合」させる工事すら行われる昨今、既存建物の構造計算や耐震補強など、日常茶飯である。補修や補強も、技術的には十分に可能なはずである。それを採用せず建て替えとなったのは、よくいえば購入者の意向に沿ったためだろう。新築の高級分譲マンションなのに補修とは気持ち悪い。「きずもの」「いわくつき」は嫌だ。まさに気持ちの問題でしかなく、合理性に欠ける。そして、いわくつきの物件であるという事実は、建て替えられても残る。建て替えても解決しない問題を、建て替えで解決しようとしていることになる。まったく合理的でない。さらに、補修では所定の耐震性能が得られないとの説明をしているというが、そんなはずはない。購入者の顔を立てようとして、技術的に正しくない説明をしているのではないかと疑いたくなる。それでは、当座はよくても後々の信頼を下げかねない。

 いつまでも住民の増加に貢献しない宅地は、自治体から見ればもったいない限りである。一定以上の規模となる建物の建設と販売は、当事者間だけの問題ではなく、地域の問題である。これまでの新築工事に続き、解体工事(基礎を除く)と「再建築」工事が続くことになり、周辺住民から見れば延々と工事が続くことになる。何の軋轢も残らないとは思えない。建て替えが終わった後、そんなところにわざわざ住みたい人が、本当にいるのだろうか。

・日経BP ケンプラッツ「三菱地所は円満解決に向けオプション権を付与」(2014/4/2)
 http://kenplatz.nikkeibp.co.jp/article/building/news/20140401/657589/

 > 問─オプション権(選択権)とは何ですか?
 > 答─主たるオプションは、これから再建築されるTPHG南青山高樹町を、同じ条件(住戸、価格)で優先的に購入いただける権利です。今回のような不祥事がありましたので、完成した住戸を実際に内覧していただいた後に、オプション権を行使できるようにしています。
 > ただ、再建築には時間がかかるため、当社が販売する都心物件の優先販売等のオプションも用意しました。

 > 問─TPHG南青山高樹町に関して、何名くらいの方がオプション権を行使する見通しですか。
 > 答─再建築後も入居したいという声は多数聞いていますが、実際に権利を行使する人の割合は現段階では分かりません。

 販売を中止し、購入者との契約は解除する。そこまではよい。しかし、その後がいまいちである。何が何でも現在地に同等の高級分譲マンションを、いち早く建てなければならない(そのため一刻も早く解体しなければならない)とする根拠が希薄である。端的に、躯体と工期(人員)がもったいない。

・「南青山の新築億ションが解体開始!」(2014/7/18)
 http://ameblo.jp/japanproperties/entry-11884733966.html

 見栄えが悪く、空間も狭くなろうとも、耐震補強して10年程度、賃貸住宅とする方法もあっただろう。壁の厚みが増すなら、ついでに防音性も確保してミュージシャンや音大生向けの部屋にするという手もある。建て替えても残る「いわく」も、例えば著名な音楽家やアーティスト(の卵)が住んだ場所として、10年かけて「伝説」に上書きすることができれば、新たなブランドイメージを生むこともできよう。

 高級分譲マンションの担当部署だけでは、天と地がひっくり返っても思いつかないだろうが、世の中は天から地まで連続的につながっている。窮地にある人たちが自分たちだけで考えたソリューションは、概してとんでもないものであることが多い。困ったときほど第三者の意見を聞くべきだといわれるのは、そのためである。普段、解体工事と新築工事しか見ていない人たちが急には補修工事の監理ができないとしても無理はないが、それは部署内や社内でのみ許される、内部の理屈である。建て主が建て替えだと決めたら反論できない建設会社も弱い。せっかくの技術力が泣いている。2020年に向けて、建設資材や人員の浪費が許されない状況下にあって、実にもったいない話である。
posted by tht at 06:00 | コメント (0) | トラックバック (0) | ながめよみのすすめ
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