2006年9月11日

タグがネットを切り拓く〜ソーシャルブックマークの優位性

 自分が見たウェブページに「タグ」と呼ばれる分類のラベルを貼って他の人に紹介することのできるサービス、「ソーシャルブックマーク」が流行している。(「クリップ」と呼んでいるところもある。)ポータルサイトやコミュニティサイトがこぞってサービスを始めており、あなたもきっとどこかで見たことがあるだろう。

 しかし、内容はいまいちなところが多い。マニアックすぎる内容や、あまりにも賛否の割れるような時事問題ばかりが出てくる。それぞれのサイトが抱えるコミュニティの性質がダイレクトに現れているのだろう。何気なくのぞいてみた人は、ちょっと近寄りがたいという印象を持つかも知れない。

 そもそも、登録されているブックマークの一つ一つが「ソーシャル」でなければ、いくら集めてもソーシャルブックマークにはなりようがない。

 多くのサイトでは、ユーザーがログインすると出てくる「マイページ」からブックマークを登録できるようになっている。もともとブックマーク機能を提供していたところに、タギング(タグを付与すること)やランキング表示の機能を追加して「ソーシャルブックマーク」と称しているサービスも多い。

 ここに大きな落とし穴が潜んでいる。ユーザーがソーシャルブックマークの成り立ちや意義を理解していないと、単なる人気投票と化してしまう。それではいくらユーザーが増えても「ソーシャル」という性質は育っていかないことになる。

 ネット上には膨大な量の情報が存在している。テレビでも見るかのように何でもリアルタイムで見ようとするのは、無謀なことなのである。また、古い情報には価値がないと見てしまうのも誤りである。むしろ、最新の情報の多くは「新しい」という以外に特段の価値を持たない場合も多い。これはテレビや新聞と本を比べてもわかることである。

 本来、ある情報に価値があるかを決められるのは、その情報の受け手だけである。膨大な情報を予め人気投票で選り分けてしまうことは、ほんの一時の判断で多くを切り捨ててしまうことを意味する。受け手自身が自在に情報を選び取ることができるようにするには、多様な情報を多様なまま、時間を越えて提供していくことが求められる。そのために、より多くの検索の手がかり(メタデータ)を付けておこうというのが、ソーシャルブックマークである。無数の個人の関心が網の目のようにつながることで、情報の取りこぼし、必要な情報に到達できないということを減らせる可能性があるわけである。

 いわゆる「情報化社会」の現状をどのように見るかということにも関係するが、少なくともソーシャルブックマークの文脈においては、「活用されずに眠っている大量の情報があちこちに散逸している」という見方をする。確かに情報そのものは捨てるほどあるかも知れない。しかし、情報のありかに関する情報(メタデータ)は圧倒的に不足しているのだ。どんなに有用な情報も、それを必要としている人がアクセスできないのでは意味がない。適切なメタデータを与えられて、アクセス性が保証された情報を増やしていくためのプロジェクト、と読み解くこともできる。

 「それならGoogleがあるじゃないか」と思われるかも知れない。ただ、GoogleはGoogle自身が解説しているように、機械的な処理しかしていない。例えGoogleが「判定不能」としてしまったページでも、ある人が見れば有用である、ということはざらにある。人間の情報処理能力はコンピュータとは比べものにならないほど柔軟で強力であり、何が有用で何が有用でないかを瞬時に見分けることができる。ソーシャルブックマークというのは、あたかもグリッドコンピューティングにおいて複数台のコンピュータをつなげるのと同じように、人と人をつなげてタギングを促すシステムなのである。うまくいけば、Google以上に効果的なインデクシングができる可能性がある。

 どのようにすれば、ブックマークは「ソーシャル」になれるのか。

 ソーシャルブックマークのユーザーが、半ば日課のように「今日の話題」をブックマークとして登録していくのではいけない。脈絡のないブックマークが乱立しては、どれが重要なのかわからなくなる。おもしろ過ぎて涙が出たとか、調べ物をしている中でとても参考になった、といった、ユーザー自身にとって十分な価値があるということ、つまり、ブックマークとして登録するに足る「理由」や「文脈」というものが必要なのである。

 この段階では「ソーシャル」とはいえず、むしろ非常に「パーソナル」な主観が入ることになる。だが、ここでどれだけ強い主観が入っているかということが、ソーシャルブックマークとして集約した時にどれだけ価値があるかを決めることになる。誰かにとって、わざわざ選ぶだけの理由があるものは、他の人にとっても、例え選ぶ理由が違おうとも、やはり選びたくなるようなものである可能性が高い。他方、適当に選んだものは、やはりそれだけのものでしかない。

 ソーシャルブックマークのトップページにマニアックな内容や熱い時事問題ばかりが浮上してくるのは、単にそれらをブックマークに登録しているユーザーが多いというだけのことでしかない。ソーシャルブックマークは人気投票でもニュース速報でもないのだから、表にある新着やランキングの表示をあてにする必要はない。まずは、自分の興味のある分野のキーワードを検索窓に入力してみよう。

 思ったような検索結果は出ないかも知れない。しかし、同じキーワードをGoogleに入力した時とは、まったく異なる結果が出ているはずだ。しかも、検索結果には関連する別のキーワード(タグ)も並んでいる。これを次々にクリックしていけば、より広い範囲を検索することができる。情報検索においては条件を絞り込んでいくのが常識だったが、それは情報が予め取捨選択されて整形されている、行儀のいいデータベースの存在が前提だった。混沌としたインターネットの前では、その常識は通用しなくなる。ソーシャルブックマークでは、実に理に適った方法で目的の情報に近づくことができるのである。

【参考にしたページ】

・「ソーシャルブックマークの衆愚化について」
 http://www.fladdict.net/blog-jp/archives/2005/04/post_25.php

・「ソーシャルブックマークの衆愚化論争を読んで」
 http://blogs.itmedia.co.jp/knowledge/2006/08/post_2668.html

・「ネット世界をタグで分類する「フォークソノミー」」
 http://hotwired.goo.ne.jp/news/culture/story/20050207204.html
posted by tht at 00:04 | コメント (0) | トラックバック (0) | imolist!
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