2006年12月9日

民が作る『キャッシュレス社会』〜法律はSuicaを追いかける

 「電子マネー」というものが、世間的にどう認識されているか。

 固有名詞でいえば、「電子マネー機能つき」のSuicaはイオカードやテレホンカードと似たものだと思われ、Edyはクレジットカードやデビッドカードに近いものだと思われている。この差が、両者のシェアや普及速度の違いに影響している。Edyの不振ぶりを見れば、多くの人々にとって電子マネーというものは依然として受け入れ難い、胡散臭い代物であることがうかがえる。裏を返せば、人々は単に乗車券やJRに対する漠然とした信頼感だけでSuicaを持ち歩き、エキナカや市中の店舗で買い物をしていることになる。

 しかし、実は「電子マネー」というものは存在しないのである。

 クレジットカードやデビッドカードであれば、小さな文字でぎっしり書かれた約款が手元に届く。それを誰もが読むかは別として、そういうことを義務付ける制度があるというのは、利用者の「安心」の一つになっている。

 電子マネー機能つきのSuicaは、誰でも買うことができる。審査はいらない、あくまでプリペイドカードである。しかし、これまでのプリペイドカードとは異なり、カードの発行元が提供するサービスの支払いのみならず、他社・他店での支払いにも使える。そのため、プリペイドカードでありながら、クレジットカードと同等のシステムが構築されることになる。従って、いくら先払い方式とはいえ、利用者や利用内容に関する情報の取り扱いやカードシステムの堅牢性に対しては、クレジットカード並みのレベルが要求されるわけである。

 にもかかわらず、自社サービス専用のプリペイドカード(テレホンカードやイオカード、ハイウェイカードなど)やポイントカードを運用するのと同じような感覚で電子マネーが運用されている。それもそのはず、法律上、現在の電子マネーはプリペイドカードという形、つまり商品券の一種としてしか存在し得ないのである。

 Suicaの電子マネー機能は、例えてみれば図書券でビールが買えるようなものだ。入学祝いに図書券を贈ったらビールに化けていた…というのでは贈った意味もなくなる。交換可能な品物が限定されているために、商品券発行のハードルは低いのである。何でも買えるとなれば、より通貨としての性格が高まるのだから、ハードルも高めなければいけない。

 そろそろ法改正に向けて動き出したようであるが、PASMOにはまだ間に合わないようだ。システムトラブルで残高データが消えたので一律500円でお許しを…などという目に遭うのはごめんである。一刻も早く、利用者保護の仕組みを作ってもらいたいものだ。

 本当の電子マネーは、どのような形でデビューするのだろうか。

 何かの料金を電子マネーで支払うと割引になる。自販機やATMで現金の取り扱いがなくなる。銀行で自分の口座から現金を出そうとすると手数料がかかるようになる。給料が電子マネーで支払われる。いろいろな段階があるだろう。

 飲料の自販機で「98円」といった値札が見られるようになる。現状が10円単位なのは現金収受の機械の都合である。同様に、電子マネー専用で料金体系も1円刻みという形で公衆電話が復活する。電子マネーの普及で、小額決済において価格設定の幅が広がる。料金の回収にコストがかからない分、価格を下げることもできる。

 アルバイトの給料計算が分単位になる。細かい勤務時間管理もカードでピピッ、時給が分割(ブンカツではなくフンワリ)でカードに書き込まれる。駅のキオスクやコンビニなど、真っ先にやりそうではないか。駅のホームで待ちぼうけ、ちょっと暇だからバイトでもすっかとケータイで申し込むと、すぐに採用。20分だけ働き、その場で給料を得て雇用関係も解消。かくして、時給ベースの最低賃金を下回る給料しか手にしない超短期労働者が生まれる。

 各社のポイントが相互に交換できる仕組みの延長線上で、日銀のポイントが選べる…となった場合、日銀が何かの優遇サービスを提供しない限り、誰も日銀のポイントを選ばないだろう。あるいは、それが何のポイントであるかということが意味を失い、単にポイントというものが通貨の役割をこなしてしまう。

 いかにもありそうな未来である。
posted by tht at 13:22 | コメント (1) | トラックバック (0) | ながめよみのすすめ
この記事へのコメント
Suicaと比較した場合、Edyの方が発行枚数も利用可能店舗数も上回っていますが…iDかなにかの間違いでしょうか。
Posted by   at 2007年1月25日 05:13
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