2007年1月25日

民が作る『キャッシュレス社会』(2)〜Edyが出遅れた理由

 先日掲載した記事「民が作る『キャッシュレス社会』〜法律はSuicaを追いかける」で触れた「Edyの不振ぶり」について補足しておきたい。

・Edyの利用状況(2005年4月/2006年8月/2006年11月)
 http://www.edy.jp/press/html/050407.html
 http://www.edy.jp/press/html/060809.html
 http://www.edy.jp/press/html/061127.html

・Suicaの利用状況(2006年6月)
 http://www.jreast.co.jp/youran/pdf/jre_youran_p55_58.pdf

 EdyとSuicaは、ともにソニーの「FeliCa」を使うICカードサービスとして、2001年11月にサービスが開始されている。

 電子マネーとしては当初のEdyくらいの普及速度か、あるいはもっと普及しないまま頓挫してしまうということすら考えられた。現在の爆発的な普及のきっかけは、何といってもSuicaである。Edyはストレートに電子マネーという看板を背負って登場したのに対し、Suicaは乗車券という「仮面」を被って登場した。Suicaで電子マネー機能が提供されるまでの約2年間は、より多くの人にICカードの仕組みや利用方法に慣れてもらうための準備期間だったわけである。

 現在の状況についてはさておき、サービス開始当初のEdyとSuicaを見比べることによって、電子マネーというものが人々にどのように認知され広まっていったのかを見ることができる。

 Suicaにおいて電子マネー機能のサービスが開始されたのは2004年3月である。それ以前のSuicaは、単なる「IC乗車券」だった。

 その2004年3月時点で、Suicaの発行枚数は約800万枚。関東の1都7県(栃木・群馬・山梨を含む)と宮城県における15〜74歳の人口は約3500万人。この時点で既に4人に1人が「Suicaホルダー」だった計算になる。関東にお住まいの方であれば、この数字には実感を持って納得していただけることだろう。(ちなみに、主要駅の改札口で磁気券の投入ができない「Suica専用通路」が登場したのは2005年2月のこと。この時点で発行枚数が1000万枚、自動改札機でのSuica利用率が45%を超えたという。)

 Suicaが晴れて電子マネーになった2004年3月の時点で、Edyの発行枚数は約400万枚だった。SuicaとEdyは同時にサービスインしていながら、サービス内容の違いによって発行枚数に2倍の開きが出たわけである。このことを先の記事では「Edyの不振ぶり」と表現した。

 なお、現在のEdyは「おサイフケータイ」の上でも使うことができるが、「おサイフケータイ」のサービスが開始されたのは2004年7月である。従って、2004年3月の時点ではカード型のみが提供されていたことに注意してほしい。

 この状況下では「使うかも知れない」あるいは「よくわからないがとりあえず」といった軽い気持ちで契約されたものが相当数あるものと考えられる。発行されたものの実際には使われていない(財布の中で眠っている)カードの数が少なくなかったはずで、もともと多くはない発行枚数の数字からさらに差し引いて見る必要がある。

 Edyでは全国チェーンの店舗を中心にした加盟店開拓が行われており、面的な展開は実現できていなかった。使っている人は便利に使っているが、知らない人は存在すら知らないという状態だったわけである。400万枚というのは「健闘した」といえる数字かも知れないが、多くの人にとってインパクトがあったわけではない。

 その後は店舗端末の共通化などにより、SuicaとEdyは協調して成長を続けている(もともと同じFeliCaなのだから当然の帰結だと思うが)。SuicaによるICカードそのものの認知と普及への貢献と、Edy(と信販各社)による加盟店拡大の努力によって、現在の利用環境が形作られてきた。

・Suica、iD、QUICPay、Edyの端末共通化(2006年9月)
 http://www.edy.jp/press/html/060927.html

 Edyの発行枚数は、2004年3月を境に増加のペースが上がっている。2006年11月時点での発行枚数は約2300万枚で、内おサイフケータイは約450万台となっている。はっきりした時期はわからないが、2005年中にEdyの発行枚数がSuicaの発行枚数を上回っていた。全国区のサービスでありながら、ローカルなSuicaを超えるのにこれだけかかったというのは、いかに電子マネーの普及が(それ単体では)難しいことだったのかを物語っている。

・おサイフケータイの利用状況(2005年10月)
 http://www.nttdocomo.co.jp/binary/pdf/info/news_release/report/051019.pdf

 上記の資料によれば、おサイフケータイ対応機種を所有している利用者の4人に1人が実際におサイフケータイ機能を使っているという。年齢別では30代の利用が多く、利用場所としてはコンビニがダントツである。ちなみに、現金によるチャージの手間を省いてこそキャッシュレスであり、便利に使うためには事実上クレジットカードは必須といえる。このため、クレジットカードの利用に制限のある若年層と利用に抵抗のある中高年層では利用が低迷しているということになるだろうか。

・Edyサービス開始当初の出資社
 http://www.edy.jp/press/pdf/20010118.pdf

 Edyは、FeliCa開発元のソニーとグループの信販会社、NTTドコモ、大手銀行、自動車メーカーといった企業が共同出資して作った新会社「ビットワレット」によって運営されている。この手の新規事業の立ち上げとしては、実に「教科書的」というか「正攻法」というか、そういう態勢になっている。しかし、「ビットワレット」という聞き慣れない名前だけで安心して電子マネーを使えというのは無理である。いわば「第二の通貨」、現金の代わりになるほどの重要なサービスである以上、利用者は非常に高度な「安心」を求める。

 その点で、SuicaにはJR東日本という「安心」がついていた形になる。Edyも、おサイフケータイでの展開によってNTTドコモという「安心」が追加された格好だ。
posted by tht at 21:27 | コメント (0) | トラックバック (0) | ながめよみのすすめ
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