2007年1月25日

民が作る『キャッシュレス社会』(3)〜「通貨」としての電子マネーと日銀

 いわば「第二の通貨」、現金の代わりになるほどの重要なサービスになってきた「電子マネー」。利用者は非常に高度な「安心」を求める。

・「貨幣論(05年度後期)講義の内容」
 http://www.econ.kobe-u.ac.jp/~fujita/kaheiron05.pdf

 「第一の通貨」ともいえる(普通はいわないが)日本銀行券は、建前上、人々や諸外国の政府が日銀を信用すること、つまり国への信用によって成り立っている。(実際には強制通用力があるので、信用しようとしまいと通用はする。政治・経済の不安定な国の通貨や戦時の貨幣を考えるとわかりやすい。)その日本銀行券そのものを電子化すること、つまり日銀が管理する電子マネーというのは実現できないか。

 日銀の研究所(日本銀行金融研究所)ではどんな議論がされているのか、ちょっとのぞいてみよう。

・金融研究第16巻第2号「電子マネーの私法的側面に関する一考察」(1997年6月)
 http://www.imes.boj.or.jp/japanese/zenbun97/yoyaku/kk16-2-1.html

・金融研究第20巻第1号「「技術革新と銀行業・金融政策」(2001年1月)
 http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/2001/yoyaku/kk20-1-1.html

・金融研究第23巻法律特集号「通貨偽造罪の研究」(2004年8月)
 http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kinyu/2004/yoyaku/kk23-h-2.html

 1つ目の資料の要点はこうである。電子マネーの価値はどこに存在するのか。つまり、残高データ自体に価値があるのか、残高データは抽象的な価値の存在を裏付けるだけなのか。「電子マネーとは何か」という問いを突き詰めると、そういう難問が待ち構えている。10年近くが経った今も法改正には至っておらず、答えはまだない。

 2つ目の資料は具体例が多くわかりやすい。ただ、時期が早いので「デビットカード」が電子マネーの例として挙げられていたりする。経済のグローバル化と電子商取引の拡大が金融(政策)にどんな影響を与えうるのかというのが本題で、いわゆる電子マネーについてはほとんど触れられていない。

 3つ目の資料は、「電子マネーをいかに定義すれば通貨偽造罪に問えるか」という具合に、一般の人とは正反対の方向から論じている。「通貨あるところに偽造あり」というが、ありもしない通貨(例えば10万円札)を作り出して人を騙しても通貨偽造罪に問われるとか。それはともかく、電子マネーが本格的に「通貨」として通用する時代になれば、それにふさわしい新しい法律が必要だという考えが示されている。その他、地域通貨、ポイントカードに関する部分も興味深い。

 本題に戻ろう。3つ目の資料では、民間の電子マネーを法定通貨として認める可能性、日銀が電子マネーを発行する可能性の両方が例示されている。また、仮に民間の電子マネーを法定通貨並みに法律で保護するとなれば、それ相応の(現在よりも強固な)信頼性が必要になる。このため、国などによる公的認証機関が電子マネーのシステムを評価するなどの施策が必要になるだろう、という考え方が紹介されている。

 長らく銀行を中心にしてお金が動く「間接金融」の時代が続いているが、過去にはそうではない「直接金融」の時代もあった。現在の「電子マネー」は、今のところクレジット決済に銀行口座を使うなどしているが、残高の移動が便利になれば、家計において収入から支出までのすべてが電子マネーだけで済む時代にならないとも限らない。誰も銀行にお金を預けなくなったら、預金をもとに融資をして利益を出す銀行はつぶれてしまう。一方、「電子マネー」の運営会社は「チャージ」という名目で日々多額の現金を集めており、既にちょっとした銀行である。現状のシステムを使って遠隔地にいる他の利用者への送金サービスを提供することも(技術的には)可能である。

 法律上は単なる商品券(前払式証票)でありながら、着実に「通貨」としての足場を固めつつあるのが、現在の「電子マネー」である。本来あるべき姿がどうのこうの…という議論には、どうしても時間がかかる。ならば現実に動いているシステムが問題を起こさないよう、速やかに適切な規制をかけるべきである。
posted by tht at 21:28 | コメント (0) | トラックバック (0) | ながめよみのすすめ
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