2006年6月6日

専門化と一般化のさじ加減

 最近の新製品の中で「これは!」と思ったのに紹介記事がいまいちでがっかりしたケース。

・BUFFALO製品ニュース「フロッピー感覚で使えて、配布メディアとしても便利なUSBフラッシュメモリ」(4月12日)

・同、製品情報
 http://buffalo.jp/products/catalog/item/r/ruf-q16_4p/

・インプレス PC Watch「円盤型USBメモリ「バッファロー RUF-Q16/4P」を試す」(4月27日)

 あくまで一般論であるが、IT系のニュースサイトには「必ず長所と短所を併記せねばならない」という「強迫観念」のようなものが感じられる。長所だけを書いていると客観性がないと思われる、とでも思っているのだろうか。とはいえ、目先の適当な短所を書いて客観性を装うというのは許されることではない。

※「誉めるのは難しい」とよく言われるが、それは物事の性質や背景がわからないと評価ができないからだ。そういう意味では、「批判するだけなら誰でもできる」というのは正しくない。気に入らないからケチをつけるというのは誰にでもできるが、的確な批判をするのは難しい。

 こういう「マニア向け雑誌」の感覚を引きずったつまらない部分でIT系のニュースサイトは損をしているように思う。読者の呼び込みにも広告の売り上げにもそこそこ成功しているのだろうが、専ら娯楽的な扱いをし続けているのは気になるところだ。これだけITが普及している時代に、「マイコン」が「ホビー」だったころの感覚そのままでいては時代錯誤だろう。

 いわば「表舞台に立てるメディア」には成りきれていないといったところか。既存の新聞はガンジガラメの用語統制と厳しい紙面の制約(をサイト上に持ち込んでいる)のせいで、知っている人にとっても知らない人にとっても(結果として)わけのわからない記事になってしまいがちだ。こういう雑誌由来のサイトに頑張ってもらうほかないのだが。

※日経のサイトは例外的で、開発者や識者へのインタビュー記事など読み応えのある記事も多い。答えるほうにも「日経なら…」という気持ちが起こるのだとしたら、ネームバリューと言うものにも意味がある。まずは会ってもらえて語ってもらえなければ、記事にもできないのだから。

 以下は冒頭で紹介した記事について気づいた点である。やや「昔話」(私にとってはそんなに昔でもないのだが)が混じるがご容赦いただきたい。

 > キャップを外した後の形は扇形で横幅もあるため、デスクトップPCの背面のUSBコネクタなどに装着すると、隣のUSBポートが使えなくなるというデメリットがある。

 「背面のUSBコネクタに挿す」ということ自体、マニアックな発想である。たいていのメーカー製PCでは、前面や側面など使いやすい位置にUSBコネクタがある。USBメモリを使う時に、わざわざ背面のコネクタを選ぶユーザーがいるだろうか。

 他のコネクタと干渉することは、わかりきっている。それでもこの形をしているのには意味がある。おもしろ半分でこの形をしているのではなく、扱いに不慣れなユーザーにも使いやすいように配慮されていると読み解くべきであろう。この形を認めた上で批評するのがフェアというものではないか。

 ライター氏は「FD感覚で使う」ということの意味を誤解しているのかも知れない。この製品がターゲットにしているのは、「かつてFDを使っていたユーザー」ではない。「現在もFDを使っているユーザー」だ。

 CD-RやCD-RWでは、書き込みに手間がかかりすぎる。記録面も剥き出しで、丁寧な扱いが求められる。カートリッジ入りで頑丈、読み書きに特別なソフトもいらないFDは、とてもユニバーサルなメディアなのだ。

 WindowsXPのHomeEditionを使っていると、ネットワークに共有フォルダを開くのも躊躇する。細かいアクセス権限の設定ができないからだ。そんな環境では、隣のPCにちょっとファイルを1個コピーしたいだけでも、メールに添付したりする。間違って他人宛に送ってしまう恐れもある。そんな時には、FDくらいに気軽に使える物理的なメディアが欲しい。

 > デザインを重視した反面、本体サイズは60×9mm(直径×高さ)と
 > 一般的なUSBフラッシュメモリと比較すると大型で、
 > 積み重ねた場合はFDよりかさばる。

 かさばるのを承知でこのデザインなのだから、かつてのFDのように何十枚も積み重ねることは想定されていないのだろうと気づきたい。

 一時期、MOやZipが重宝した時代があった。この時に一人が何枚のディスクを使っていたかというのが参考になる。DTPをかじっていた私の場合は、Zip100×3枚でそこそこ足りた。230MBのMOを数枚持ち歩いている人もいたが、何十枚も持っている人は見たことがない。

 もちろん16MBというのはフロッピーより大きいとはいえZipにも及ばない小ささではあるが、16MBで発売されるからには16MBで足りるユーザーがいるということだ。1セットの4枚も使いきらないかも知れない。16MBで写真が24枚保存できると聞いて「それで十分」というユーザーもいるだろう。改めて考えてみると、このあたりの市場は未開拓だったのだ。

 なお、Zip100のディスクは相当にごつかったが、邪魔だと感じることはなかったことを付け加えておく。

 > FDの後継としては1枚当たり870円と高価なのも難点だ。

 安いか高いかというのは、常に主観的な判断になる。CD-RやDVD-Rの50枚入りパックを買う人から見れば、それは割高だろう。だが、ジュエルケース入りのCD-RWを1枚買って大事に使い続ける人からすればどうか。この製品が一個だけで足りるシーンを考えれば、十分に納得の行く価格ではないだろうか。製品のターゲットを的確に理解し、ターゲットになったつもりで判断してもらいたい。

※ちなみに、同じ筆者による別の記事では、製品の重さについて極めて素直な感想が書かれていた。白いものには「軽そうだ」という先入観を持つので重く感じられることが多い…といったことには無頓着なのだろう。

 このかわいらしいデザインを見てレゴブロックを連想した。適度に大きさがあり、小さな子どもでも扱いやすそうだ。「子どもに持たせよう」と思いつく大人は相当数いるに違いない。

 例えば学校で、一人に一個ずつ持たせる。一年間壊れずに使えれば、800円くらい安いものだ。ラベルが大きいので名前も見やすく書ける。16MBもあれば、写真が数枚とワードやパワーポイントのファイルが数十個は入るだろう。

 小さいものは、よくなくす。あの輪っかに紐を通しておけそうだ。いや、キャップだけをなくしそうな気もする。本体とキャップも紐でつながっていれば、もっといい。キャップをなくしそうになるというのは、従来のUSBメモリにも共通する問題だ。紙や胸ポケットに留められる形をしている製品もあるが、挟む部分がすぐに割れてしまう「やわ」なものもある。このような「キャップ問題」にも触れられていると、記事を読んだメーカーの人が「ああそうか」と思ってくれるかも知れない。

 数々のブログを見ても、いまいち反応が鈍い。メーカーのページを見るとそれなりに魅力が伝わってくるのだが、ニュースサイトの記事を読むと「げてもの」という先入観を抱かされがちだ。メーカーは製品のコンセプトをもっとわかりやすく、まずはニュースサイトのライターに正しく理解されるような説明にするべきだったのだろう。ただ、開発元はメルコではなくアメリカの会社だという。

 大柄で大雑把な感じのするデザインは、どことなくZipをも連想させる。こんなものが日本で売れるのか半信半疑なまま売り出しているのだとしたら頼りない。流行とは別に、がっしりしたデザインの製品を好むユーザーはいつも確実にいる。見た目が頑丈そうだからという理由で古い98NOTEを使い続けていたり、DELLを選んだりする人もいる。きちんとマーケティングすれば、きちんと売れるはずだ。

 > 本体の作りはチープな印象を受ける。

 照明のあて方が下手なのか、記事の写真からは質感がつかめない。傷がつくと目立つようなら、確かにチープかも知れない。「作り」というからには、キャップ開閉時のクリック感が弱いのだろうか。もっと具体的に書いて欲しかった。

 メーカーのサイトで製品の写真を見る限りでは、表面は適度にザラザラしていて良さそうに見える。気になるのはキャップの素材の堅さだ。外した時にブヨブヨするのでは頼りない感じがする。
posted by tht at 19:18 | コメント (0) | トラックバック (0) | 未分類
この記事へのコメント
コメントを書く
お名前:

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント:

※ブログオーナーが承認したコメントのみ表示されます。
この記事へのTrackBack URL
http://blog.sakura.ne.jp/tb/815466
※ブログオーナーが承認したトラックバックのみ表示されます。