2014年2月22日

プラスアルファにプラスして

 スイーツのあとは、国会会議録の検索である。

 最近の新聞記事で、国立国語研究所の「現代日本語書き言葉均衡コーパス」を調べたというものもあったが、これは「現代」という名前の通り、1971年より前のデータが含まれない上、計算機での利用が前提でデータ数が多く、手作業で大きな動きを俯瞰するのは難しい。検索結果の件数の多寡だけで議論するのは野暮である。また、言葉の変化は書き言葉より話し言葉で顕著である。

 一方の国会会議録は十分に期間が長く、収録条件も期間中ほぼ一定、サンプル数もほどよい。庶民の言葉を代弁している(と自負しているであろう)野党議員もいれば、参考人の学者も出てくる。バランスがよい。何より、特筆すべきこと(ニュースバリュー)がなかった日常の委員会でも、きっちり検索対象に含まれることがありがたい。新聞記事や書籍、ブログ、ツイッターでは、現に特筆された内容しか出てこない。

・朝日新聞「片仮名「ナゴヤ」、なぜ多い? 画数節約、縁起担ぎも」(2014年2月19日)
 http://www.asahi.com/articles/ASG2G6264G2GOIPE02G.html

・国立国語研究所「少納言」
 http://www.kotonoha.gr.jp/shonagon/

※「現代日本語書き言葉均衡コーパス」にも1976年以降の国会会議録が含まれる。

・国会会議録検索
 http://kokkai.ndl.go.jp/

※検索結果は本記事の末尾にまとめて示す。

 流行語になる以前の「プラスアルファ」は、会計や給与に関する専門語であった。「何かよいもの」というニュアンスはなく、「赤字がプラスアルファになる」という用例もある。純粋に数字の話であった。専門の委員が専門用語として「プラスアルファ」を使いこなしている一方、答弁する大臣は「プラスアルファというもの」といい、「自分はよく知らないが何かそういう専門用語があるらしい」という距離感が出ている。

 流行語になった「プラスアルファ」は、基本給のほかに支払われる各種手当を指している。そこから「何かよいもの」「ごほうび」「うれしいサービス」といったニュアンスが派生してくる。やがて、サービスがあって当たり前の時代になると、「プラスアルファ」は「あとちょっとの追加」「ささやかな追加」を意味したり、逆に「取るに足らないもの」を揶揄するのにも使われるようになっていく。

 もともとは金銭や便益などに関して使われてきた「プラスアルファ」であるが、次第に何にでも使われるようになる。どうにも増えない数字をなんとか増やすために、苦心して別の費目を追加する、というところから、ある施策に追加の施策を上乗せする話や、基準に基準を重ねる話にも使われるようになっていく。

 21世紀が近づくと、技術的、学術的な文脈で「プラスアルファ」が使われるようになり、「何か先進的なもの」「何か知的なもの」を連想させる空気ができていく。そこに出てきたのが「講談社+α文庫」である。このころには、「あってもなくてもよいものだが、あればあるにこしたことはない」というニュアンスや、「そこまでがんばらなくてもいいことも手抜きせずにがんばるわたし」といったニュアンスも生じていたように思われる。前者については、レジャーのブームもあり、持参すべきもののリストに「お菓子、プラスアルファ」などと書いた人も多いのではないだろうか。後者は、いわゆる「とらばーゆ」である。資格取得や「転職」(山奥の神殿で喝を入れてもらうソレではない)のブームとも連動していた。

> ○市販のお菓子+板チョコで量産モード

 「量産」にも「がんばるわたし」のニュアンスが既に生じている。「量産」という言葉を使うことが大いにはばかられるような大事件や、劇的な価値観の転換でも起きない限りは、このまま定着していくのではないだろうか。

・国会会議録検索
 http://kokkai.ndl.go.jp/

・7 - 衆 - 考査特別委員会 - 8号(昭和25年2月8日)
> ○岡田(春)委員 ともかくも今百十九億円という赤字を見込んでおられますが、二百五十万トンの貯炭が未処理のままになつて行くということを見て、赤字がプラス、アルフアーになるだろうということだけは見通しがつけられるのですが。

・7 - 参 - 地方行政委員会 - 18号(昭和25年3月7日)
> ○国務大臣(鈴木正文君)
> 十億になるか、十五億になるか、二十億になるかというふうなことは、未決定でありますけれども、これによつて四十億プラス・アルファーというものが資金として考えられる。

・7 - 参 - 人事委員会 - 8号(昭和25年3月16日)
> ○国務大臣(増田甲子七君)
> 特殊勤務手当と超勤手当、その外にプラス・アルフアーというものがあつて、

・8 - 参 - 農林委員会 - 閉1号(昭和25年9月18日)
> ○説明員(長谷川清君)
> 五千二、三百円には到達しないのであります。従いましてここに何らかのプラス・アルファをつけ加える必要があるということに相成るのであります。このプラス・アルファの考え方でありまするが、
> 先程麦の価格決定のときに申上げましたような考え方とを併せ勘案いたしまして、何らかのプラス・アルファを考えたいというふうに考えた次第でありまして
> このパリティ価格の外にいわゆるプラス・アルファといたしまして大体の考え方は早場木奬励金でありますとか或は米麦の超過供出奬励金の二割五分の分その二つと、その外に今申上げます奬励金を合算いたしましたものが大体米麦のパリテイ価格の一割くらいに相当する金額という考え方で

※「早場木」は「早場米」のOCRミスと思われる。

・91 - 参 - 予算委員会 - 3号(昭和55年2月14日)
> ○秦豊君 じゃ、単なる表敬プラスアルファぐらいですか、余り具体性がないんですか。

・91 - 参 - 商工委員会、物価等対策… - 1号(昭和55年3月18日)
> ○目黒今朝次郎君
> 新聞に書いておるものにプラスアルファぐらいの中身について、国会のこの連合審査で答弁できないんですか、説明できないんですか。あれは全部うそだと、あんなのマスコミが勝手に書いたんだと、あんなこと。

・ 110 - 参 - 土地問題等に関する特別… - 閉1号(昭和62年11月20日)
> ○秋山肇君
> 道路に対してセットバックをするある程度の基準を決めて、今まで四メーターのものが六メーターに下がったならば容積率をプラスアルファしますよというのがたしか建設省でこの前出ているわけです

・107 - 衆 - 商工委員会 - 7号(昭和61年12月16日)
> ○近藤国務大臣
> そういうことで、民間の需要は需要として、プラスアルファで国の公共事業がどれだけ役割を果たすかということは、
> それにプラスもう一つは、まさに海外問題でございます。

・107 - 衆 - 決算委員会 - 4号(昭和61年12月11日)
> ○天野国務大臣
> その道路が一般会計で出す予算では足りないというので、過去において一般会計プラスアルファということで、自動車重量税と、その前にガソリン税と二つの税金を取りました。これはあくまでも一般会計に対してのプラスアルファだという、当時大蔵省と我々の折衝がそうであったのでありますが、現況になってみたら、プラスアルファどころか、プラスの根っこが何もないわけですから、丸ごとその二つの税金で扱っている。これほど重要な公共事業を限られた国民の協力によってのみやっているという国、不思議な国だと、私、公共事業に関係して三十年間やっておるのですが、そう思っております。
> ですから、今度の場合非常におくれているのは、河川関係は非常に予算が取りにくいと、私、自分が今までやってきてみて考えております。そういう観点から、これは今度は絶対プラスアルファであるという考え方でこの整備税はかけてもらうつもりであります。整備税が出せないというのなら、一般会計でこれだけはどうしても足してもらいたい。農林省と建設省で約一千億ちょっとでありますから、それほど大量のものではありません。そういう意味で、あくまでもこれはプラスアルファだという考え方で進めていきたいと思っております。

・101 - 衆 - 科学技術委員会 - 3号(昭和59年3月8日)
> ○渡辺参考人
> やはり組みかえDNAによる万が一の問題もあるので、単なる素材として取り扱う微生物、生物の病原性あるいはDNAの病原性だけではなく、それにプラスアルファの制限をしようということに現在なってきているわけですね。
> やはり新しい技術ですから、それプラスアルファの問題もあるので、そのアルファの部分は未知のものとして残しておく必要があるのではないかというふうに思うわけです。

・116 - 衆 - 内閣委員会 - 2号(平成1年11月16日)
> ○鎌田参考人
> 僕としては、竹内基準プラスアルファ、例えば大阪大学の基準がつけ加えたように、脳死と判定されてもホルモンが出ておるからそれは死でない、こういうことは言ってはならないことなんです。
posted by tht at 12:00 | コメント (0) | トラックバック (0) | ながめよみのすすめ
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