2006年7月2日

エキナカと地元商店街の共存

 昨日の朝日新聞夕刊で、東京都が打ち出したエキナカ店舗への課税強化と地元商店街の声が記事になっていた。

・朝日新聞「「エキナカ」好調、周囲の商店「客減った」と摩擦」(7月1日)
 http://www.asahi.com/life/update/0701/005.html

 この記事に限らず、エキナカと地元商店街は対立の構図でとらえられる傾向にある。しかし、本当にそうなのか。実は互いに相手を必要としているのではないか。エキナカが地元商店街に影響を与えないはずがない。商店街側の受け止め方次第で、同じものが悪影響にも波及効果にもなりうる。

 商店街だけが変化を免れることはできないし、変化のための努力をしなくて済むはずはない。

http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/dr/20051220md01.htm
http://osaka.yomiuri.co.jp/local/lo60216f.htm

http://sj17417.blog63.fc2.com/blog-entry-28.html

 東京近郊と地方都市とでは事情が違う。ここでは東京に限った話になることを断っておく。

 市街地や商業施設は集積してこそ利便性が高まる。商店街という存在も、もともとは周囲の居住人口に対応して商店が集積したものだ。(過疎地や離島では一軒の商店がそれに対応していたりする。)しかし、大規模なマンションが建つなどして人口が膨れ上がった街においては、相対的に集積度が不足する。商店街が想定する商圏よりも狭い商圏を狙って林立しているのがコンビニである。より大きな商圏は大型店がおさえている。大型店よりさらに広い領域にはネット通販が浸透してきた。

 昔は商店街が抱えていた商圏を、今は大型店とコンビニと通販が割拠しているのだ。もはや商店街は中途半端なことこの上ない。このことは商店街の店主たちも認めなければならないだろう。

 そこに生まれたのが、エキナカの商業施設である。交通の結節点という性格から自然と賑わいが生じる、まさに一等地中の一等地である。どんな店があるかといえば、パン屋にお菓子屋、そば屋にすし屋、本屋と、まるで商店街である。ただ、八百屋や魚屋や電器屋はない。それらは量販店やスーパーに譲っているからだ。エキナカでは、大型店やコンビニとかち合わない商店街のあり方が具現化されているといえる。

http://premium.nikkeibp.co.jp/retail/case/12/

 いわばエキナカは、現在の状況下でも利益の上がる商店街のモデルを提示してくれているのだ。精確なマーケティングの成果である。これを商店主たちの寄り合い所帯たる商店街が自力でこなすのは難しい。ライバル視して敵対するよりは、ちゃっかり真似をして自分たちも儲けるほうがいい。エキナカの側にはそれを許容する用意があり、また期待もしているがために「共存を…」と言っているのではないだろうか。

 狭い範囲に同じ業態の店が複数あってよいのである。例えばケーキ屋はロールケーキ屋に、パン屋は特製メロンパンの店に、より細分化すればいいだけの話である。焼きたてを出したり、石窯を使っていることをアピールするのもよいだろう。こういう発想に旧来の商店街はついて行けていないように思える。客を囲い込もうとしているのは、むしろ商店街のほうなのではないか。これまでの商店街が10人に10品買ってもらうモデルだったとすれば、1品ずつでも1000人に買ってもらえるモデルへの転換が必要なのだ。

 極端な例では、宇都宮のギョウザがある。同じ品目、しかも単品であっても、いろいろな店が並ぶことで食べ比べ、食べ歩きの楽しみが生まれる。商店街自体をテーマパークのようにしてしまった好例だ。さすがにこれの二番煎じはうまく行かないところが多く、龍ヶ崎のコロッケにはいまいち感がある。後発の商店街はもっと地道に「一店一品運動」に取り組むのが無難かも知れない。

http://www.sainet.or.jp/~niizasci/gp.html

 商店街に足りないのは効率と統一感である…とすれば、一つの商店街全体が一つの会社でも作って、仕入れ担当者や経理担当者を共有してみてはどうか。店ごとにバラバラなのは、いまどきあまりにも非効率である。はやらなくなって店を畳んでしまった経営者も、経営の仕事は続けられるだろう。ショッピングモール大手のイオン、その前身のジャスコは「共同仕入機構」として設立された。時代も規模も違うが、同じ考え方と方法が通用するのではないか。

http://www.aeon.info/company/enkaku/

 商店街の有志が株式会社を設立して、病院内店舗の経営に参入した例もある。病院や大学などに売店や食堂を設けないという消極的な地域振興策もあるが、それでは施設の利用者の利便性を犠牲にすることになる。店が二つになるのは大変だろうが、まったく異なる客層を獲得できるなど収穫も多いはずだ。

http://www.syoutengai.or.jp/genki/tokyo/towa/towa.html

 これと同じ方法でエキナカに参入することもできるのではないか。老舗の和菓子屋のような店なら十分に現実味があると思われるが、いかがだろう。エキナカの側にしても、エキナカが広がるにつれ生じてきた金太郎飴状態を改善できるわけだから歓迎されるはずだ。そうなると、税金が割安なことは商店街にとってもメリットになってくる。不公平感や競争心から安易に課税強化を後押ししてしまうと、後悔することになるだろう。都は商店街のためではなく、あくまで増収のために増税したいだけなのだから。

 それより何より、商店街自身でこれだけ反省できるのはすばらしい。

 > ○第二次大戦後、物さえ店に置いておけば売れるという時代が続き、これになれすぎてしまった。
 > ○大店法に守られてきたため、戦略的体質が欠如し、競争力がなくなっている。
 > ○消費者を無視し、自らの都合で休日や営業時間を定め、労働時間は今やサラリーマンよりも短くなってしまっている。
 > ○SCやCVSが商店街内外にできてもこれに対処すべく客の支持を得る努力を怠ってきた。

 お客の立場から見れば、こんな商店街には魅力の欠片もないわけだ。それに気づかないままエキナカのせいだと言っていては、内側からつぶれてしまうだろう。
posted by tht at 13:48 | コメント (0) | トラックバック (0) | ながめよみのすすめ
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